スコット大佐の南極探検日誌から、興味をひかれたところを抜粋します。
一部、話の内容がわかる記述が含まれていますので、お気をつけください。





静かな夜に続いて、また一日平穏な日。
気温はマイナス12度(マイナス24.4度)まで下がった。
こんな風に割合暖かいのは、どういうことだろうか。

基地で進んでいる仕事の量を考えると楽しくなる。
誰一人怠けているものがいない-手という手はふさがっており、
勤労がすばらしい成果を生むことは疑いようもない。(中略)

ウィルソンはせっせと鉛筆と絵具箱を使って美しい写生を着々と増やしており、
ときにはディスカバリ号当時の動物研究の空白を埋める仕事をしている。
そのうえ、いつでも進んで人の助言したり手を貸したりもする。
分別にとんだ判断力は一同認めるところで、したがって常に調停役を務めている。

既知の円満な活動は、バワズの実務能力によるところが大きい。
あらゆる手はずがおのずと定まる自然な方式を心得ていて、
だから消費と供給がやすやすと、かつ正確に調整される。
私にとっては各物資がいつまで持つか分かるという計り知れない利点があると同時に、
浪費のおきようがない点で安心だ。

オーツの全心は小馬の上にある。
本当に熱心で、きっとそりにひき季節までには、なしうる限りよい体調に仕上げてくれるだろう。
荷を解いたり、樹脂ストーヴをすえつけたりなどに忙しくかかっている。
従者アントンも休みなく厩で働いている。-感心なちびさんだ。

エバンス兵曹(水兵エバンス)とクリーンは寝袋の修繕をしたり、フェルト半靴の上張りをしたりして
橇引き旅行具全般の整備をしている。
実際、怠けてているものはひとりもなく、怠けようと一人でも思っているものはいない。





風は昨夜10時ごろ落ちた。
今朝は静謐で空は晴れ、氷晶の軽いもやがかかっていて、その向うから
月が殆ど曇りなくきらきらと耀き、周囲に明るい十字形のかさと白い幻月ができていた。
幻月はところどころ七色になって、まばゆい輪を作っていた。(中略)

この地では、ごく簡素な飲食で充分であることが
ますます確かになっていくようだ - 必要なだけのアザラシの肉、小麦粉、へット、
それに茶、ココア、砂糖。安楽に生きていくのに本当に必要なのはこれだけなのだ。

★う〜ん、へットってなんでしょう…?

南極探検隊の食事については、度々記述されています。面白いので26日の記述も。





われわれは異常なほどよい生活をしている。
昨夜の食事には、濃いアザラシスープの結構なのが出た。
まるで濃い野うさぎスープのようだった。続いて、これもよい味のあざらしステーキに
腎臓パイと果物ゼリーが出た。

今朝は、目をさますとから揚げの匂いが迎えてくれ、朝食にポリッジのあとで
風味豊かなノトセニア魚が二匹づつでた。この魚は異常に甘味がある。
ーーバターとマーマレードをつけたパンで食事が終わった。
昼食にはバターつきパン、チーズ、それにケーキ。
今夜は羊肉が調理されている匂いがする。現状でこれ以上食欲をそそり、
そしてこれ以上壊血病の症状を起こしにくい食事或いは食養生を考え出すのは
難しかろう。我々が壊血病にかかるとは思えない。

★この豪華な食事は、まだ基地にいるからだとおもわれます。
旅行時の食事は「ココア,ペミカン,砂糖,乾パン,バター,茶」とあります。
…確かに、異常なほどよい食生活ですね…。こんなにたべ(れて)てないよ、私…。






今日、気温が+19度(−7・2度)にもなった。
南風が夕方まで続いたが、空は晴れ、山の周りにだけ、ちぎれ雲があって美しい色に映えていた。
今夜は月が山の背後から現れ、晴れ渡った北の空を進んでいく。
風は落ち、あたりは壮麗な景色だ。

私の誕生日で、自分だけなら忘れてしまったかもしれないのに、
みんな覚えていてくれた。昼食に巨大な誕生日のケーキが姿を見せ、
一同その周りに集まって記念撮影をした。
クリソルドは砂糖を振り掛けた頂上を、チョコレートのいろいろな細工や
砂糖漬け果物や小旗や、私の写真などで飾った。

散歩の後で分かったのだが、晩餐会の準備が大々的に進行しているのだった。
時刻になると、一同橇の幟を張り巡らした中で、豪奢な馳走の並ぶ食卓についた。
クリソンドの極上あざらしスープ、焼き羊肉にあかすぐりゼリー、
果物サラダ、アスパラガスにチョコレート …… こんなすごい献立だった。
飲み物にはサイダー・カップ、これはいまもって 中身の突き止められない神秘の飲み物だ。
それに、シェリーとリキュール。

贅沢な食事の後は、一同大いに愉快になり、悪気のない議論に花を咲かせた。
私がこれを書いている一方で、暗室に一団が出来、政治の進歩を論じて大議論になっている。
別の一団が晩餐の食卓の一隅で、物質の起源と、
それが究極的に発見される可能性について論じているし、もう一団が軍事問題について論じ合っている。

まとまりよく意見がいえたとおもったり、止めを刺す一句がいえたとおもったりするときの
得意げな声の響きを耳にするのは愉快だ。
誰も彼も少年にかえったのであり、それもこんなにすばらしく気立てのよい少年たちだ。
この多弁な舌戦のなかに、とげとげしかったり、むっとしたところは露ほども見えず、
耳障りな語気も感じられなかった。全て笑い声で終わるのだ。



★基地内の楽しげな様子が伺えます。しかし食事の記述が多いですな…(笑)




















































































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