シアター1010で7月24日〜25日に行われた「タルチュフ」の観劇レポ&感想です。 <劇場の様子> 北千住に降り立つのも初めてなら、シアター1010に行くのも勿論初めて。 シアター1010は、なんと北千住・丸井の10階〜12階。 今回は、稽古場1ということで、10階へ。 北千住丸井自体が2003年の5月にOPENしたということもあり、とても綺麗な建物でした。 10階はグレーの絨毯で落ち着いた雰囲気。いろいろな施設が混在しているらしく、 アトリエや講義堂のほかに千住区民事務所まで。 今回の公演は全席自由席。開場の一時間前に整理券が配られるとのことでしたが、 時間になってもその気配なし。なんでも、初回のマチネ公演も 整理券はなく先着順だったとか。 …整理券が要らない程度の人数なのか、 直前になって大量にはけたため混乱を避けてのことなのか…。 後者であることをお節介にも祈りつつ、会場入り。 今回の公演は、特にパンフレットなどはありません。 その代わりに、入場の際、大森さんの挨拶と、 配役が記された手作りのカードを頂きました。 皆さん、このカードにサインをもらっていたようです。 開演前の舞台には、真ん中にラジカセが置かれていて 妙に愉快な曲が流れてました。音楽に暗いので、ジャンルの識別が出来ないのですが。 いかにも手作りっぽい雰囲気なので、この音楽ももしやテープ?と思っていましたが、 2日目にラジカセを置いた場面で一種の音が止まったところを見ると なにかのCDでしょうか? 詳しい方、もしくはよさん、ご一報ください…。 <レポート&感想> 女の子が真ん中に進み出、携帯電話に対する注意をうながします。 「もうすぐ始りますので、暫くお待ちください」といいながら、ラジカセを持って退場。 この女の子、後に小間使いのドリーヌと判明。この時点の観劇メモは 「珍妙な服装をした女性」。しょっぱなから失礼千万な私。 トランペットと太鼓の音が大きくなり、幕のほうから大森さん登場。 胸にトンボのイラストが入ったTシャツにあわせているのは、 なんと緑のスーツ。 ご本人の趣味ではなく、衣装であることを祈願しているうちに、客席に一礼。 拍手にちょっと驚いた(ふりをしつつ?)、白いソプラノリコーダーをとりだしました。 白なので多分バロック式です。一般的な黒リコーダー(ジャーマン式)でないのは、 フランス王朝のバロックとかけてるため? それを優雅に演奏しだす大森さん。 その音をおいかけるように、舞台に出演者による演奏隊が登場します。 クラリネットは、ひさしぶりにみるトキタさん。 額にかからないように分けた髪がよくお似合いです。すっきり伸びた背筋で、 懸命にクラリネットを吹きまくるこの勇姿。ファンの友人に見せてあげたい。 大森さんも縦笛をおいて、サックスを手にしていたような…。 しかし、この演奏隊に横田さんの姿が無かったため、Sさんの心に 「よさん、音譜が読めないのかしら…」という疑惑が宿ったとか。 後に「クラリネットといわれたんですが、台詞が多かったので 勘弁してもらいました…」との本人の弁明が入りました 疑惑は晴れたものの、残念なことに変わりはないです。 この演奏隊は、この先も場面展開ごとに現れ、BGMの役割を果たすことに。 ロープに結んだ国旗(どこの国?)がするすると上がり、いよいよタルチュフ、開幕。 * 今回の芝居は、鈴木力衛の訳をもとにしながらも 現代風にアレンジがきいている様子。台詞もかなり変わっています。 大森さんはタルチュフに参っている主人の弟、クレアント。 オズリック以降、はじめてみる演技ですが、最初から魅せてくれました。 只、きれいというのでなく、エレガントな動作と声。 すっと指を立てるという、何気ないしぐさも目にとまります。 これまでの役柄とすこしもかぶらない演技の幅広さは圧巻。 ペルネル夫人の大月さんもいい味。 強烈な印象で、ぐいぐい引き込まれました。 金満家のオレゴンは、宗教家のタルチュフに心酔。 周囲の反対を押し切り、家事全般を任せ、旅行からかえれば 家族の健康よりもタルチュフのことを気遣う始末。 ついには、婚約の決まっていた娘の縁談を破棄し、 タルチュフとの結婚をすすめようとします。 しかし、心酔する主人とは裏腹に疑いを抱く家人。 特に妻のエルミールは、マリアーヌとその恋人ヴァレーヌの結婚を すすめるために、タルチュフに話を持ちかけようとします。 ここで、開演30分を経てタイトルロールのタルチュフが登場。 「お〜〜い、ローランド!?ローランド!」と、幕の向うから聞こえる声は、 たとえ原作を読んでいなくても、すぐにそれと分かる響き。 横田さんの声は、きれいに放物線を描いて胸元に届く印象があります。 朗々たる、という表現がぴったりの耳に残る声。 「私の苦行服と鞭を片付けておくれ。誰かが私に会いに来たら、 施しを受けた金を囚人に分け与えに行ったと伝えなさい」 この格調高い台詞と共に、横田タルチュフ登場。 … 出 た 登場と同時に、世界がみごとに反転。 横田タルチュフ、胡散くさきこと限りなし。 黒のジャケットに緑色のラインの入った綿の丸首シャツ(釦5つ付き) 左胸の白い部分、ポケットかと思いきや当て布です。うむむ、芸が細かい。 ズボンは、足首が見えるようにきった白ジーンズ。 腰には、まずグレーに水玉(?)の布をまき、その上は濃い灰色の布。 これが中途半端なので、後ろから見ると、出来損なった燕尾服のキレッ端のよう。 そして、さらにベージュともオレンジともつかぬ薄い布を、ベルトのように 左前で結んで前にたらしています。腰から下がっているふさふさの珠は、 おそらくカーテンを縛るアレ(名称知らず)。 おなか周りの衣装は、一目見たときは腹巻かとおもってしまいました…。 兎に角。「怪しい」という言葉を具現化したような奇妙な服装であらせられます。 「そのおっぱいを隠してください!!」とドリーヌにいいつつも、チラ〜〜リと胸の谷間に 目を走らせるタルチュフ。しょっぱなからいかがわしさ全開。 「お前達は、2羽の雉鳩のように仲良く暮らせるだろう」って、オレゴンぱぱ。 これが鳩だとすると、ノックアウトマウスの如く、遺伝子レベルでの操作がなされてますよ…。 でも、このいかがわしさが、面白い!! * 狂言には「業平餅」という在原業平をパロディ化した曲が合ります。 史実では美しいとされる業平が、いかがわしいエロオヤジとして描かれているので、 「美男だとあまりおもしろくならない」といわれている作品です。 実際、野村萬さん(狂言界では美形という認識です)が 若き日に演じたときは、「はまりすぎてダメだ。面白くない」といわれたとか。 しかし。 横田タルチュフ は K点を超えた 美形なのに、この胡乱さ。 私の心にスマッシュヒットをとばしたホレちゃんの影は、どこにもありません。 煌くばかりの胡散くささです。役者って凄い…。 特に、エルミールに捧げる祈り、「おんみの日々が祝福されますことを〜」の部分。 あの台詞がこんなに面白いことになるとは…(この時点で、既に涙目の私。) 台詞覚えに苦労なさっていたようですが、それを微塵も感じさせない 確かな言葉と動作です。 >>>> とりあえず、この辺で次回に!! 様子のおかしいレポですみません…。 |
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